SN比とは

損失関数から定義されるように、お客様の目的を表す特性値でのデータは平方和の分解を行うことで、お客様にとって有益な成分と有害な成分、どちらでもない成分に分けられる。 

目標からの2乗に損失、利益が比例することから、有益な成分/有害な成分と比を取り、加法性のためにオメガ変換した形がSN比である。 

技術には必ず目的があり、その目的はさまざまであるから、有益な成分と有害な成分の定義は技術の目的により異なる。 

特性値も2乗和での加法性の成立のために、2乗がエネルギーの単位となるような特性値を選ぶことがコツとなる。 

この経済的な指標とも言えるSN比を用いることで、パラメータ設計における最適条件の決定や予測精度の経済的な判定が行えるようになるなど用途は広い。

 エネルギー比型SN比(Energetic S/N ratio):

関西品質工学研究会から、従来のSN比の問題点の解決と損失関数との整合のために新しいSN比が提案された

従来のSN比 η=10log((Sm-Ve)/Ve) 

 

従来のSN比の問題点: 

・繰り返し数や信号数が異なったり、欠足データが有った場合など、比較条件間でデータ数が異なると比較できない 

・信号の値が異なった場合は比較できない :競合品との比較では、信号を揃えられないことは多い 

・Sβ-Veが負となる場合は計算ができない 

・分母、分子をそれぞれ自由度n-1、1で割っており、分散比(F値)の形で、 

 F値と同様にnにより意味は変化し、F分布による判定が必要となる。 

 

その計算方法は、平方和の分解後を行った後、目的に応じて平方和を有効成分と有害成分に定義し、有効成分/有害成分の比を計算したもの。dbには10log(有効成分/有害成分)と対数をとる。 

 

動特性

ゼロ点比例SN比: 原点(0,0)を通る線形関係

          ηE=10log(Sβ/(St-Sβ))           従来のSN比(21世紀型) η=10log((Sβ-Ve)/VN) 

基準点比例SN比:平均値を原点とする線形関係

          ηE=10log(R^2/(1-R^2)) 

                                ここでR^2はピアソンの積率相関係数 

 

静特性

望目特性:目標値が正負やゼロの場合。データの変動は総変動(St=y1^2+y2^2+・・・)。

望目特性の場合: ηE=10log(Sm/(St-Sm)) 

これは総変動StはSm+Seと分解され、Seは有害成分であり、Smは有効成分を示す。

有効成分/有害成分のオッズ比を取り対数を取るのがオメガ変換

 

ゼロ望目特性:   ηE=10log(n/(St-Sm)) 

 

望小特性:小さければ小さいほどよい場合で負はとらない。ゼロからの偏差の2乗に比例

         ηE=St/n   :比率ではないため対数を取ることは疑問。

 

望大特性:大きければ大きいほどよい場合で負はとらない。寿命や強度など。

      田口は逆数が小さくなれば良いとして、逆数の望小特性を提案しているが問題がある。

 特性値は損失ではなく利益に比例すると考え、その平均値を望大特性とするのが良い

     ηE=Σy/n  平均値

 

新SN比の利点: 

テスト条件が異なったり、欠足値がある場合でも比較可能なSN比を提供できる 

実験条件が揃っている場合は従来のSN比と同じ結果となるので、過去の実験結果との整合性がとれる 

これまで相対評価でしか使えなかったSN比の値も意味を持つようになる。たとえば0dbは効果とノイズの大きさが同程度の状態ということ。30dbや40dbの結果が出るパラメータ実験ではノイズ不足が懸念されるなど。 

 

従来のSN比では条件が異なった場合は、このような場合は実験をやり直すか、条件が揃うようにデータを減らすなどするしかない。