MT法とは、予測やパターン認識に活用される手法で、人間や動物が五感により行なっている総合判断を工学的に行う事が主目的である。
例えば、赤ちゃんが母親の顔を他人と区別できる。犬が主人の声を聞き分ける。料理が美味しいかどうか。
工学は、画像や音声については研究が進んできたが、味や臭いについてはまだ遅れている。
統計や機械学習などの工学的な判別手法が試みられているが、多くの学習データや特徴項目とその研究が必要である。
しかし、赤ちゃんや犬が特徴量の研究を行っているはずがないし、特徴量を研究できるほどの多くのサンプルを必要としていない。
人の学習にはデータは1つで良いことも多い。文字を覚える時は、教科書に書かれた1字で判別できるようになる。
また、人は頭の中で項目間の複雑な相関を判断しているとは思えない。
赤ちゃんは母親一人にしか会っていないが、他の人が母親ではないとわかる。
それが誰なのかはわからないが、それで十分なのである。
従来の判別分析では、複数のパターンのどれに属するかの判別を行うが、MT法では、正常状態という1つのパターンを研究し、それ以外は全て異常とする新しいアプローチである。
正常なものはパターンを持つが、さまざまな異常があり、異常はパターンを持たない。異常を研究することは効率が悪い。
田口博士がMT法の発想の元となったロシアの文豪トルストイの「アンナ・カレーニナ」の冒頭
「幸せな家庭は同じように似ている、不幸な家庭はそれぞれの事情で不幸になっている。 」
MT法はその目的に応じて大きく2つに分類できる
数値の予測を行う MTS法、MTA法、TS法、T法
正常、異常の判定を行う MTS法、MTA法、RT法、誤圧法
データ数は項目数より少なくても解析可能
一般の多変量解析では項目数<データ数の制約があり、そんな大量のデータが集められずに使えないことも多い。 しかし、TS, T, RTの特徴として、項目数がデータ数より多くても解析ができる。
人や動物はデータ数がたとえ少なくとも多次元の項目での予測や判別が行えていることから。
赤ちゃんは母親の顔しか見たことがなくても、他人と区別できる。文字を覚える時は、教科書に書かれた1字で特徴を理解できる。など。
MTS | MTA | TS | T | RT | |
予測 | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
判別 | ○ | ○ | △ | △ | ○ |
項目数>データ数 | × | × | ○ | ○ | ○ |
項目数が多いほど予測や判定の精度があがる可能性は高い
TS法は真値から項目の寄与成分を展開していく方法であるが、展開する項目の順番で結果が変わってしまう点で問題がある。
MTS,MTA法は、重回帰分析などの従来の多変量解析同様、データ数は項目数より多く必要